品質評価

品質評価には、主観的な評価と客観的な評価があります。
画面や帳票の文字サイズや色、また、フォーカスの移動や画面の表示・切替えのタイミングや速度というものでは、評価をするにあたって主観的な要素がたぶんに含まれます。コンピュータシステムは、人間が操作するものですので使いやすさの面では主観的な要素も価値があるといえますが、システムの設計モレやプログラムの実装ミスといった評価には客観的な視点が必要です。

設計や製作といった人間が行なう作業には誤りが含まれてしまうことは避けられないものと考えるべきで、その誤りをいかにして検出するかが品質を高める行為といえます。

プログラム単体テストをする場合、テスト項目を何件実行するのがいいのか、不具合が多いのか少ないのかを判定する基準となる件数は何件なのか、といった具体的な値が存在しないと客観的な判断をすることはできません。

では、テスト項目数や不具合検出数標準値は、どのようにして求めたらいいのでしょうか。
その基準が一定であることが、客観的に品質を評価する際の根拠となります。

システム規模

システムの規模を算出するにあたっては、プログラム数や実装される機能数といったものが考えられます。しかし、プログラムや機能で見た場合、複雑なものも単純なものもあり、本数だけではシステムの実態を表すことはできません。

ソースライン数

そこで、一番ポピュラーな方法と位置づけられているものは、プログラムのソースライン数です。
複雑な機能を実装するには、相応のロジックが必要であり、プログラムのソースラインは自ずと増加すると考えられます。ソースライン数が、機能の複雑度を考慮したシステム規模を表している、という見方は妥当なものといえます。

ただし、ソースライン数はプログラムを実装して初めて明らかになるものです。また、実装モレやミスなどがあるとソースの改変が発生しますので、ソースライン数が変動してしまいます。
その点をふまえたうえでのシステム規模を算出する考え方として、ファンクションポイントを積み上げる方法が考えられています。

FP(ファンクションポイント)法

ファンクションポイント法は、システムが実装する機能を高中低といった感じで分類わけし、それぞれにポイントを与え、その集計値を以てシステム規模とする、というものです。

どのように分類わけをし、各分類に対するポイントをいくつにするか、という部分の精度が要求されます。ファンクションポイントにてシステム規模を決定するには、ある程度のシステム開発経験があり、その実績値を分析して決められるポイントが、標準的として認められている必要があります。

品質指標(メトリクス)

品質を客観的に判定する基準を、品質指標(メトリクス)と呼んでいます。

よく採用される指標として、レビュー密度・試験密度・誤り検出率があります。

【レビュー密度】
レビュー密度は、設計工程で用いられる指標で、システム規模当たりのレビュー実施時間です。レビューというのは、作成された設計資料の正確性をチェックするために、資料の記述内容を確認する作業です。

【試験密度】
試験密度は、試験工程で用いられる指標で、システム規模当たりの試験項目数になります。

【誤り検出率】
誤り検出率は、設計工程と試験工程の両方で用いられる指標で、レビューで検出した誤り数と試験で検出した誤り数がシステム規模に対して適切かを判定します。

品質の評価は、品質指標により採取した情報を分析して行ないますが、情報の精度が低いと正当な評価につながりません。

レビュー密度では、レビュアがまちまちな指摘をしてしまわないよう、事前にレビューのルールを決め、レビュー品質を均質化しておく必要があります。

試験密度では、試験項目にヌケやダブりが無いことをチェックするとともに、一つの試験操作で一つの試験結果(OK/NG)が得られることを確認しておきましょう。

誤り検出では、修正箇所が同一である誤りを複数カウントしてしまうことがないよう、重複区分を設けておく必要があります。

また、誤りの重要度やどの工程で作り込まれた誤りなのかの識別しておくことにより、誤りの影響範囲の判断や潜在不具合の検出に対して効果があります。

品質分析

品質の評価は、試験作業が全て終了してから行なってしまうと、品質が悪かった場合の対応が遅くなり工期の延長を招きかねませんし、費用も膨らんでしまいます。

そこで、試験作業の進捗状況をみて、前半・中盤・後半・最終の4段階程度で実施すると効果的といえます。例えば、誤りの作り込み要因を分析して、あるサブシステムの設計工程での誤りが多いということがわかると、その作業に関連する試験を優先的に実施するよう調整することができます。

ゾーン評価

品質を評価するツールとして、ゾーン評価があります。縦軸を誤り検出率、横軸をレビュー密度または試験密度とし、レビュー対象の文書単位または試験対象のプログラム単位に実績値をプロットします。

<以下の図は、試験密度での例>

「品質不良」あるいは「残存多い」というエリアにあるものを品質強化対象として、誤り発生要因を分析して適切な対処を行ないます。

重大誤り発生傾向グラフ

誤りの危険性を評価するツールとして、重大誤り発生傾向グラフがあります。

誤りの重要度を期間ごとにプロットし、重大な誤りの有無や発生傾向を押さえます。

パレート図

パレート図は不具合の傾向分析を把握する際の利用されます。
不具合の要因として比較対象しやすい要素ごとに発生件数を積み上げ、件数が多い順に並べ変えたグラフです。

例えば、プログラム開発を依頼した外注先ごとの不具合発生数を比較して、どこの外注先の不具合発生が多いのか、それが不具合全体に占める割合としてどのくらいかをチェックすることができます。

ゴンペルツ曲線

ゴンペルツ(誤り検出収束予測)曲線というツールがあります。試験作業の終了判断に利用するもので、誤りの発生傾向を把握し収束に向かっているかを評価します。

品質の評価

品質の評価では、品質指標による評価も重要な要素になりますが、例えば、誤りが標準値の範囲内であっても重大な誤りが多く発生しているのであれば、品質としては疑うべき点があると判断すべきです。

さまざまな切り口から事実をとらえ、また俯瞰的な視点も併せ持ち、システム全体に対する最終的な品質を評価してください。

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